ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
ラウンジには、お茶の支度が整っていた。向かい合って座り、黙ってお茶を飲む間、牧師は彼女を見ながら何か考えていたが、やがてこう尋ねてきた。
「あなたは、どうやら上流家庭にいらしたようですね」
「……どうしてです?」ぎくりとしたがさりげなく問い返す。
「あなたの身のこなしや言葉使いには、普通の中流のお嬢さんとは思えないものがあるからですよ。だがそのくせ掃除や洗濯もおできになる。そういう所も不思議に魅力的なお嬢さんですね」
「………」
「あなたのソールズでの評判は聞きました」彼の目がやけに真剣味を帯びてきた。
「いろいろと学識をお持ちで、教え方もうまいと皆が誉めていましたよ。もちろんあなたの……、その、美しさについては、わざわざ言うまでもないことですが」
「別に、そんなことは……」
会話の雲行きが怪しくなってきたので、慌てて遮ろうとしたが遅かった。牧師は彼女の手を取り上げると、ついに決定的な一言を口にした。
「あなたがシークエンドに来てくださるなら、これほど嬉しいことはありません。どうでしょう、この話、真剣に考えてみてくれませんか? わたしの妻になってほしいのです」