ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

「おっと、わかったのはまだほんの最近ですよ。消える経費があるような気がしていましたが、これでかなりはっきりしてきました」

「これが過去八年分として、一体、いつからなんだ? 全体はどれくらいになる?」

「保管してある帳簿を全部見せてください。お出ししますよ」

「よくよく見ればわかることだったのに……。父上はこの程度もチェックせず、運営をずっと工場長に丸投げしていたのか?」

「別に大旦那様に限ったことではありませんね。世間でもよくあることです」

「……だから、こんなことになるんだな」

 エヴァンは疲れたようにふーっと大きく吐息をついた。

 だが、これでようやく数年来経営が傾きつつあった原因が明らかになりそうだ。

 彼はカーターに、探偵を雇いさらに工場長の突っ込んだ身辺調査をさせるよう命じた。

 動かぬ証拠がそろい次第、寄生虫はまとめて容赦なくたたき出してやる。


 カーターがまだまだ言い足りない、という顔でふんと鼻を鳴らして出ていくと、エヴァンは留守中に積みあげられた手紙の束に顔をしかめた。

 いっそあいつに、これも全部任せてやろうか。

 そう考えながら開封と返信にしばらく時を費やす。

 大半は貴族仲間の会合やパーティの招待状だ。

< 62 / 261 >

この作品をシェア

pagetop