ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
それから数日間、苛立ちながらもエヴァンはなすべき義務を黙々とこなしていた。
出席すべきパーティでは社交的会話をひねり出し、彼の気を引こうと近づいてくる令嬢達はことごとく、失礼にならない程度に相手をして追い払った。
「なんだ? 機嫌が悪いじゃないか」
友人達にはあきれられたが、さくっと無視する。
こじれた取引先との関係修復のため、相手の屋敷に出向きカードに興じるふりもした。
なすべき義務を、彼は黙々と果たしていた。
まったく大いなる義務だ! こんなことはすべて放り出して、今すぐ彼女に会いに行きたくてうずうずしているのに!
ローズマリーはもう元気になっただろうか。
今の生活に欠けているのは彼女だった。
彼女の存在が、この無味乾燥な日々のたった一つの慰めであり希望だった。
一年前、自分のプロポーズを受け入れて、上流社会の様々なしきたりや作法を学ぶために懸命に努力してくれた彼女が、どれほど愛おしかったかまだ話してもいない。
今まで話す機会さえなかったのだ。
探して探して、ようやく再会した途端、病床についてしまったときには心配のあまり眠れなかったほどだ。
病後の少しやつれた彼女を見るたびに、抱き寄せずにいるには、鉄の意志が必要だった。