ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

 一息にこう告げると、ローズは泣き出さないうちにくるりと向きを変え、牧師館へ戻ろうとした。

 だが数歩も行かないうちに、伸びてきた腕に力いっぱい引き戻されてしまう。

「それができるくらいなら、君を探すのにあんなに苦労する訳がないじゃないか!」

 今行かせてしまったら終りだと、彼にもはっきりわかった。

「行かないで。お願いだ」

 エヴァンはあえぐように息を継いだ。心臓が音を立てて脈打っている。

 どうしてこんなにこじれてしまったんだ? 離れていたこの一年に何かあったのか?

「もう、お話することは何もないですから……」

「じゃあ、どうして泣いてるんだろう?」

 はっとして目元を押さえたが遅かった。エヴァンはもう一度、ローズをしっかりと抱き寄せた。愛しげに名を呼ばれ、あやすように抱かれていると抵抗する気力も萎えてくる。

 さっきのような荒々しい力任せの彼になら抵抗もできた。だがこういう優しさには弱かった。


「いいね、二人でもう一度話し合うんだ。ここを出て一緒に来てほしい」

 その言葉にとうとうローズは、こっくりとうなずいていた。
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