ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
「君の目と口の意見の相違については、もっと時間をかけて話し合う必要があるようだね」
「何も違ってなんかいないわ。今言った通りよ」
これ以上こんなことばかり言いたくない。もうおしまいにしよう。
再び彼を見たとき、茶色の目は穏やかに潤んでいた。
「わたしのためにこんな所まで来てくださったなんて……。どんなに感謝しても足りない気持ちです」
「感謝してもらうために、夜通し馬車を走らせて来たわけじゃない!」
子爵が乱暴に遮るのも聞かず、ローズは首を振って後ずさった。
「まだ……そんなふうに思ってくださっていたなんて、思ってもみなかったんです。でも、わたしはあなたには相応しくない。それだけははっきりしています。わたしには、もう今のあなたの気持ちだけで十分……」
「ローズマリー!」
「どうか、このままお帰りください。最後にもう一度だけ、お会いできて幸せでした。さようなら。どうぞお元気で!」