ふくらはぎの女(ひと)【完】

黙々と。

邦男は手を動かしながら

うーん・・・・・・と長考し、

やがて答えた。

「がっかりした・・・

って言うほど

真剣に望んでたわけでもない

・・・けどさ。

できたんだって

完全に思い込んでたからな。

なんか逆に不思議だよ。

この、子供ができてなかった

現実の方が」

「そう?」

「うん。

仕事中も色んな事考えてたしな」

「どんな事?」

「しょうもない事ばっかだよ。

どっちに似るのかなぁーとか。

親に早く報告しないとなー

とかさ」

「私も私も。

『女だったら

私に似てほしくないのは

毛深いとこと足が太いとこだな』 

とか、

『男だったらとりあえず

潤一郎には性格似ないでほしい』

とかね。

なぜか、消極的な願望ばっか」

「はは」

「なんかね、

自分もついに母親かぁって

思ってたら、

やたらお母さんの事

思い出したりしてね」

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