ワンだふる ワールド 9 ~ワンコの未来~《TABOO》

そこへ1台の軽トラックが止まった。


「沙希…か?」


驚きながら降りたのは、初代ハチ公の賢吾。


地元に残って稼業の漁師を継いだ彼。

真っ黒に焼けた逞しい体のグレートデンだ。

再会も束の間、彼はハチを一瞥すると、仕事に行くと走り去っていった。


憮然とするハチを宥めながら、灯台へ続く石段の途中のベンチに座った。


紅く焼けた夕陽に輝く海を眺める2人。

長い沈黙を破って、意を決したハチが口を開いた。


「俺、沙希と結婚したい。」


突然のプロポーズに驚いたが、


「ありがとう!」


と笑顔を返す。

途端、感極まったハチが石段を駆けおりた。

砂浜まで走って行くと、流木であいあい傘を描いて手を降っている。


――もぉ、恥ずかしいよ…ハチ


照れながらも、記念に写真を撮っておこうとカメラを構えた。

焦点を合わせようとレンズを覗くと、沖の方を進む船が何故か旗を掲げている。



《 幸 せ に な れ よ 》

望遠で見ると、グレートが旗を持ちながら手を振っていた。


海のように広い彼の男気は、私の瞼にくっきりと焼き付いた。




――ごめん、ハチ



――私、彼にも釣られちゃったみたい





END
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

今度はあなたからプロポーズして

総文字数/83,823

恋愛(純愛)202ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
あなたは プロポーズをしたことが ありますか? あなたは プロポーズをされたことが ありますか? どんなに 深く付き合っても プロポーズの先は誰も知らない 誰しもが避けては通れない 幸せへの階段 ~ ~ ~ ~ ~ ~ 久しぶりのデート中に 大喧嘩してしまった二人 そこに現れたのは… 偶然の出会いが 感動と勇気を与えてくれる ようにしたいと思ってます。 佐々木暁様 いいよ様 bikke様 素敵なレビューを ありがとうございます!! 季節リボン様 couleur様 叶音様 浅海ユウ様 ミマサカトワコ様 木村咲様 感想、ありがとうございます! とても嬉しく思っています! 2011.11.1 Berry's Cafe編集部様にて オススメ作品として 紹介していただきました。 大人女子が 本当に読みたい小説大賞 一次審査を 進出させていただきました! これも皆さまのおかげだと 感謝しています! 重ね重ね ありがとうございます!
ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間

総文字数/131,729

恋愛(純愛)153ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
忠誠を誓う愛しき我がワンコ でも、 たまには 違うワンコとも散歩してみたい ねえ、わかるでしょ? でも、 その軽い気持ちの散歩が トラブルの始まりだった 戌年だけにワンコ絡みで 書いてしました。 拙作ですが、 たくさんの方に 読んでいただけたら幸いです。
ワンだふる·ワールド12~ワンコの誓い~《TABOO》

総文字数/998

恋愛(キケン・ダーク)3ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
忠誠を誓う愛しき我がワンコ でも たまには 違う犬とも散歩してみたいの ねぇ わかるでしょ? 「彼氏がいるのに、男友達と…」

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop