◇桜ものがたり◇
「ぼくは、祐里を愛している。
どのようなことがあろうとも、必ず、祐里と結婚する。
それとも祐里は、ぼくのことが嫌いなの」
光祐さまは、逢えなかった三年分の愛情を祐里へ注ぎ、
更に強く抱きしめる。
光祐さまの真剣な愛情を受けて、祐里は、大きく横に首を振る。
「ずっと、お慕い申し上げております。
でも、光祐さまには、孤児の私など分不相応にございます。
まして結婚など畏れ多うございます。
祐里は、このようにご一緒させていただくだけでしあわせでございます」
祐里は、瞳を涙でいっぱいにして、光祐さまを見上げた。
涙で霞んだ光祐さまの顔は、春の陽射しに煌めいた。
「父上さまも母上さまも祐里のことを可愛がっておられる。
何よりも、ぼくが誰よりも愛しているのだから、
祐里は、ぼくを信じてついてきておくれ。
さぁ、涙を拭いてあげよう。
祐里が泣いていると、母上さまが心配されるからね。
祐里は、泣き顔も美しいけれど、やはり笑顔が一番似合っているよ。
ぼくのために笑っておくれ」
光祐さまは、ハンカチを取り出して、
祐里の青空を映し込んだ瞳の涙を拭う。
次から次へと流れる涙を拭いながら、
光祐さまは、ますます祐里を愛おしく感じ、強く抱きしめる。
祐里は、ぽかぽかとした春の陽だまりに抱(いだ)かれたような
夢見心地に浸っていた。