◇桜ものがたり◇

「祐里、愛しているよ」


 光祐さまは、祐里の耳元で囁いて、

 優しく髪を撫でると、手を繋いだまま歩き出した。


(誰よりも光祐さまをお慕い申し上げてございます)

 祐里は、幾度も心の中で応えた。


(ぼくは、ひとりの人間として、心の優しい祐里を愛している。

 ただ、それだけのことなのに、どうしていけないのだろう)

 光祐さまは、春の陽射しの溢れる中で考えていた。

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