◇桜ものがたり◇
旦那さまは、もったいぶって、遺言書を開く。
「先日の祐里の誕生日に、
元山弁護士より、御婆さまの遺言書を受け取った。
光祐が都に戻ったばかりだったので、
この連休まで待つことにしたのだが、なんと待ち遠しかったことか。
今から読み上げるが、これは御婆さまのお気持ちであり、
光祐や祐里にその気持ちがなければ、
遂行しなくてもよいと初めに断っておく。
ただ、私が打った電報で、このように早く帰って来たところを見ると、
光祐の気持ちは、御婆さまのお気持ち通りのようだね。
さて、祐里は、後ほど、遠慮せずに、自分の気持ちを正直にいいなさい」
奥さまも光祐さまも祐里も訳が分からないまま神妙に頷いた。
旦那さまは、それではと濤子さまの遺言書を
ゆっくりと開いて読み上げた。