◇桜ものがたり◇

「美和子、なかなか帰って来ないので、心配しましたのよ。

 社長さまのお宅にご迷惑をおかけするなんて、

 甚だ失礼なことでございます。


 今夜は遅うございますので、しかたがございませんが、

 くれぐれも失礼のないよう気をつけるのでございますよ。


 お父さまには、私からよく説明しておきますので。

 奥さまによろしく伝えてくださいね」

 恐縮しきった母・美津子の声が受話器から窺えた。


「はい。お母さま。それでは」


 美和子は、受話器を置いて、神妙な顔つきを作ると、

 薫子について部屋へ戻った。

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