◇桜ものがたり◇

 日本庭園は、春の陽射しに包まれていた。

 にもかかわらず、祐里の心は、曇天の気分に浸っていた。


 文彌へは、話す言葉が見つからず、一時(いっとき)も一緒に

 居たくはなかった。


「庭園をご覧になられるには、一時間ほどお時間がかかります。

 どうぞ、こちらから、ご案内申し上げます」

 祐里は、文彌と長い時間を過ごさなければならないと考えただけで、

 胸が塞がれる心地がして、足どりを速めた。



 



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