◇桜ものがたり◇

「困惑した君の顔もなかなか美しいね。

 僕は、二十三で、君はもうすぐ十六。

 結婚できる年齢だけど、進学したいのだったら結納を交わして、

 君が女学校を出てから結婚ということにしても構わないよ。

 こんなに美味しそうな君を目の当たりにすると、

 待てなくてすぐに結婚ってことになるだろうけれど。

 君は、会う度に美しい女に変化していくからね。

 他の男の視線に触れさせるのがもったいないから、

 今すぐにでも榛の家に連れて帰りたいくらいだ。


 光祐坊っちゃんのことが好きなことくらい一目瞭然だが、

 いくら好き合っていても、孤児の君が光祐坊ちゃんと

 結婚できるわけがないだろう」

祐里に恋焦がれる文彌は、

光祐さまと祐里のお互いに惹かれ合う気持ちを

瞬時に察知していた。


 見初めて以来、祐里の視線の先には、何時も光祐さまが居た。

 文彌は、燃え盛る恋の眼差しで、祐里を見下ろし、

 激しい恋情をぶつけるように、

 祐里の華奢な肩を抱き寄せて唇を奪おうと迫る。


 祐里は、文彌の腕の中で、力いっぱい抗った。


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