S彼

そんなことを考えながら自宅に着くと。


早速母親が「タクちゃんが学校辞めてモデルになるために東京行くんだって??」と、血相を抱えながら私に訊ねてきた。


あ~…。タクのお母さんに聞いたんだろうな…なんてボンヤリと思いながら、「そうだよ」って答えると。


「あんたも連れて行きたいって、タクちゃんが良子(りょうこ)さんに言ったらしいよ?」


……。え?


私は驚いてまん丸に目を見開いた。


ちなみに良子さんとはタクの母親だ。


タクがタクのお母さんにそんなこと話したなんてまさかそんなこと…あるわけないよ…。


私は意を決して、お母さんに言った。


「ねぇお母さん。私ね。本当に…タクと一緒に東京へ行きたいんだけど…いいかな?」


私とタクが付き合ってることは両家とも知っている。


家族公認の仲だ。


でも、それでもまだ結婚前の娘を芸能人になる男に易々と差し出すはずはない…と。


「そんなのダメだ」って言われて口論になることは避けられないと…。そう思ってたのに。


「あら。いいわよ」


母親からは拍子抜けするほど簡単な言葉が返ってきた。
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