S彼

私は「ううん、まだ……」と首を横に振った。


「ばーか。それじゃ、一緒に行けるかわかんないだろ?オマエに抜けられて困るようなら、次のバイトが決まるまで居なきゃなんないだろうし、引継ぎとかもあるかもしんないし…。ちゃんと自分の仕事に責任持てよ」


タクの言うことは尤(もっと)もだ。


「うん…。ごめんね。明日はちゃんと話してくる…」


「まったく。オマエはなんでいつもそうヌケてんだよ。オレが居なきゃなんも出来ねーんだから……」


そう言うと、タクは突然私の腕を引き寄せて強く抱きしめた。


なんだかちょっと恥ずかしくて、何か言わなきゃって思って。


「えっと…お母さんが、タクと一緒に東京行ってもいいって…」


私がタクの腕の中でそう話すと。


「はぁ?何寝ぼけたコト言ってんの?さっき、オマエの母ちゃんに「茜を宜しく」って言われてたの聞いてたろ?だからそんなのもう知ってるよ」


「…あ。。。そうか」


「ってかさ……」


タクはため息をつきながら話を続けた。


「そう仕向けたのオレだって…オマエ気づいてる?」
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