ポケットに婚約指輪


「あーあ」


 誕生石のぺリドットがあしらわれたそれは四万七千円。

『彼からもらったの』と得意げな顔で言った、数時間前の自分を思い出すと涙が出そうだ。

こんなの、自分で買った負け犬ジュエリーなのに。


「だって」


 独り言が川面に落ちる。

私のこんなドロドロの気持ちも飲み込んで流してくれればいいのに。


「これっくらいの嘘はいいでしょ」


ポツリと言葉に出したら涙が浮かんできた。

瞼に、それはそれは幸せそうに笑顔を咲かせた彼と江里子が見える。

 
 今日は、彼と江里子の結婚式だった。

呼ばれた会社仲間は、私を含め五十人。
江里子のお父さまが重役であるため、お偉いさんも多数いた。



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