ポケットに婚約指輪

 時間にして3分ほど経った後、こっそりとトイレを出ると二人の姿は無かった。
私はガムだけを買ってコンビニを出た。

エレベータをあがり、昨日からご機嫌な刈谷先輩と出会って挨拶をする。


「あら、菫。その腕時計素敵ね」

「ええ。頂き物なんですが」


笑って返事をしつつ、心の中ではいたたまれなくなる。

やっぱりこれをつけてるのは良くない?
見せ付けるためだけに、なんてそんなの性格が悪すぎる。

でも、今はずすのは不自然だ。
仕方なくそのまま刈谷先輩と一緒に人事総務部に入る。


「おはよう。刈谷さん、塚本さん」

「おはよう、舞波くん早いのねー」

「……おはようございます」


舞波さんの目が、私の左腕を確認した。
そしてにこりと笑う。

その瞬間、やっぱりつけてはいけなかったんだと思った。

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