ポケットに婚約指輪
「菫が綺麗になったのは、俺が何度も抱いてやったからだろ? それまでの冴えない自分のこと、まさか忘れたわけじゃないよな」
聞きたくなくて、手で耳を塞いだ。
つまらない女だった。
彼女のいる人に恋をして、ため息ばかりついてた。
その彼に向いてもらえて、友人を裏切るという愚をためらいも無く犯したのは間違いなく私だ。
「菫は、言いなりだから可愛いんだよ。反抗しだしたら可愛さも半減だ。今更、普通に幸せになれると思ってんのかよ、図々しい」
舞波さんの言葉は楔のように私に突き刺さる。
私の価値は、あなたの言うことを聞いているだけ?
私が幸せを望むのは、図々しいの?
言われるままに黙っている私に、一度ため息を吹き付けると、舞波さんはさっきよりは落ち着いた声音で言った。
「その好きな男って誰?」
「そんなの言えません」
「ふうん。まあいいよ。分かってるよね、今日のこと江里子にばらしたら、俺も菫も破滅だって事」