ポケットに婚約指輪
そのまま、部長の後ろについて人事総務部に戻る。
パソコン機材を片付けている私の背中から、部長の声がした。
「塚本、……舞波もちょっとこい」
「……え?」
どうして私と舞波さん?
不思議に思いつつ、部長の机の前で舞波さんと顔を合わせる。
なんだか気まずくてぎこちなくなってしまう。
「舞波、内定者の講習会で手伝いが欲しいようなこと言っていただろう。塚本に手伝ってもらうといい」
「えっ?」
私と舞波さんが同時に叫んだ。
そのシンクロ具合に部長が頬を緩める。
「ほら、息も合っているようだしな。内定者も可愛い女の子がいたほうがやる気出るだろう」
「部長、それセクハラっすよ」
「あっはっは。そうかそうか」
舞波さんが突っ込んだけれど、部長は全然気にしていないらしい。
「塚本、詳しいことは舞波に聞くといい。しっかり覚えろよ。じきに仕事を任すこともあるかも知れないからな」
「はいっ」
舞波さんと一緒の仕事なんて気まずい。
だけど、同じ部署にいる以上は避けられない話だ。
ちらりと舞波さんを見ると、彼の方も苦笑している。