ポケットに婚約指輪
聞きたい。
あなたの声であなたの意見を聞きたい。
私は正しいですか?
間違っていますか?
里中さん、あなたにはどう映りますか?
「……やっぱり変わったな、菫」
舞波さんの声が、思考を遮った。
「まあ、どっちにしろ過去の事は話すなよ。俺も結局は江里子と別れる訳にはいかないんだし」
「分かってます」
「お互いの利益を一番に考えようぜ。……仕事も、これからもよろしくな。塚本さん」
「はい」
苗字で呼んだということは、もうプライベートでのことは引き合いにださないという意味なのだろう。
仕事としてはこれからパートナーになる。いちいち険悪な雰囲気を作ることも無いので、差し出された手に右手を出して握手をした。