ポケットに婚約指輪

空気の抜け落ちた風船のようになった今の私には、それがとても羨ましい。

今日の私なんて、化粧のノリがあまりにも悪くて、わざとではなくナチュラスメイクで無ければ見れたもんじゃない顔になっている。

そういえば星占いも十二位だったな。
何にもいいこと無い。


「でも、里中くんが一次会で帰っちゃったのが痛かったなー。まさか帰るなんて思ってなかったもん。
もっと早く気づけば、無理矢理でも連れて行ったのにさ」


そう溜息混じりに言うのは、刈谷先輩だ。

今日は薄いライムグリーンのブラウスを着ている。
独特な色だと思うけど、そういうものを着ても彼女の顔は見劣りしない。
いっそ華々しくなるほどだ。


「そうなんですか」

「そうだよ。あ、菫も一次会で帰ったよね。まさかデートの相手って里中くんじゃないよね」

「まさか。違いますよ」

「だよねー」


だよねーっていうくらいなら、聞かないで欲しいのだけど。

“アンタみたいに平凡な女が彼と付き合ってるわけ無いよね”

僻みなのかも知れないけど、暗にそういう意志があるのだろうと疑ってしまう。


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