ポケットに婚約指輪

「里中さん、お連れ様はこちらです」


彼は私を見つけると、ほっとしたように笑った。

それに私は少しだけ安堵する。
大丈夫だよね? 私、彼と付き合ってるって言っていいんだよね?


「やあ、美亜ちゃん久しぶり。ごめん菫、待った?」

「……い、いえ」


口元が凍りついたように、言葉がぎこちなくしか出てこない。

駄目だ。こんなんじゃ司さんが不信がっちゃう。
ようやく隠していたこと全てを話せるんだから、ちゃんと話さないと。


「俺腹減ったよ。もう注文した?」

「まだです」

「じゃあ俺水菜とベーコンのパスタ。菫は?」

「同じもので」

「じゃあ後ワインもつけて」

「はい、かしこまりました」


司さんが主導を取ってテキパキと注文を決め、美亜さんは厨房へと下がっていく。

そして彼は私の向かいに座って世間話をし始めた。
私は頷いたり相槌を打ったりしているけれど、全然頭には入ってきていない。


私はいい意味で変われたんだと思ってた。
だけど、変わった私は司さんに好かれるような存在じゃなくなるのかしら。
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