ポケットに婚約指輪
店を出ると外はもう真っ暗だった。
夜風も大分冷たいのだけど、そこはワインを飲んだことで体が火照っているせいか気にはならなかった。通りはまだ帰宅のサラリーマンが結構居る。ゆっくりしたテンポで歩く私たちはもしかしたら邪魔になっているかもしれない。
「で、今日の話」
私に向かって手を伸ばしながら、司さんが話を蒸し返す。その手の動作が意味するところが分からなくて首を傾げると、「これ」と笑って鞄を持ってくれた。
「あ、ありがとう。……それに、信じてくれてありがとうございました」
「一応信じたけどね。まだ説明聞いてないよ。あ、舞波が元彼だってのはわかってるけど」
「何で知ってるんですか!」
焦る私を見て、司さんはくっくっとおなかを押さえて笑う。
「分かるでしょ、普通。菫と出会ったのはあいつらの結婚式の日だよ? あのタイミングで元彼に見せびらかす話されたら、まあどう考えたって元彼は舞波だよね」
「せ、正解です」
そうか。
私は隠していたつもりでいたけど、そこは最初っからばれてしまっているのね?
「なのにどうして資料室で抱き合っちゃったりしちゃうわけ? それってあいつらの結婚後の話なんでしょ?」
「それは」
「刈谷さんだって確信なきゃあんなことしないと思うよ。そこは本当なんじゃないの?」
「……それは」