ポケットに婚約指輪


「で? 菫が落としたのは何だったの?」

「いや。あの」

「大事なものだったのに。本当に悪かったよ」

「いえ、里中さんが気にすることじゃないんです、ホントに」

「お詫びだから。たくさん食べて飲んでね」

「はい。なんかすみません」


敢えて話を替えるわけでもなく、一歩進むことで刈谷先輩を会話から排除する。
これを意図的にやってるんだとしたら、彼はかなり頭のキレる人物だ。

私は勧められるままワインを飲んだ。
甘くて美味しい。こんなに飲み口の良いワインに出会ったのは初めて。


「あれ、結構イケる口? たくさん飲んでよ」


里中さんがどんどんついでくれる。

< 55 / 258 >

この作品をシェア

pagetop