ポケットに婚約指輪

一人になると期待ばかりが一人歩きする。

もし里中さんがそう思ってくれるなら、私をこの泥沼から救い出してくれる?

舞波さんの変な誘いに揺れてしまう私を、助け出してくれる?


 鈴の音と共に、扉が開く。


「お待たせ」


がっちりした体が、私の背中の方から覗き込む。


「里中さん」

「刈谷さんがなかなか素直に電車乗らなくて遅くなった。ごめん」


心臓がドキドキする。
それは、どうしてだろう。

私は彼を好きになったの?

それとも、

ただ今の状況から助け出してくれそうだから。
だから彼を求めているの?

どっち?


――――それは自分でも分からない。

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