ポケットに婚約指輪
「お疲れさま」
落ち込んでいる私の頭の上に落ちてくるのは、低い声。
「……里中さん?」
「見てた。大分お疲れのようだね。ちゃんと飯食わないと」
「なっ、食べてますよ!」
「へぇ? 終業時間になったばかりだけど? いつ食べたの?」
あっさりと揚げ足を取られる。
里中さんは時々性格が悪い。
「これからです」
「だよね。近くで一緒に食べない? 俺、まだ仕事あるから一休憩入れたいとこなんだけど」
「え? でも」
会社の近くでなんて。
もし刈谷先輩に見つかったらと思うと落ち着かない。
なのに。
「今日は俺、和食食べたいなぁ」
里中さんはもうお店検索に入っているようで、私の頭一つ分くらい上を見てブツブツ言ってる。