好きと言えるその日まで
 *


 葛西は……正直、あほだと思う。


 何がそんなに嬉しいのか、ニヤニヤして『ぐふふ』なんて笑いまで洩らしだした。


 流石の俺も天まで飛んでいきそうな葛西を何とか落ち着かせようと、べしっと頭を叩いてやった。


 それでもどうにもフワフワしている葛西。


 ―――まぁ、喜んでくれてるんだよ、な?


 それが十分なほどに伝わってきてホッとした。


 誘うのはやっぱり勇気がいる。


 そんなの行きたくないけど、先輩に言われて断れない……的な感じで行くって言われたらと思うと不安で、直接言いたかった。


 でもそれは杞憂だったとはっきり見て取れて、ふぅっと息を吐いた。



 「おい、階段ちゃんと見ろよ」

 「はーい」


 超浮かれモードの葛西に一言言うと、それにも嬉々として返事をする。


 全く。


 今俺がいなきゃコイツ危なすぎないか?


 ―――って、何考えてんの俺。


 そこまで心配しなくても、コイツだって高校生になって半年も経つんだし、何度もこの駅だって通ってるから大丈夫に決まってるだろ。


 なんて自分にツッコミを入れる。


 ほんと、調子狂う。


 葛西は俺を、俺じゃなくさせる気がする。


 ケー番教えたり。


 メールしたり。


 一緒に帰ったり。


 俺は別に、友達意外とするつもりなんてこれっぽっちもないのに。


 なんで土曜日の、ましてや野球になんて誘ってしまったんだろう。


 ―――俺にとってコイツは友達、か?


 なんて考えにフルフルと頭を振っていたら


 「先輩?」


 って顔を覗き込まれたことに慌てて、ただ行くぞと言って葛西より半歩前を歩き始めた。



 *
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