Love Songを君に【Ansyalシリーズ TAKA編】
「雪貴?」
ふと心配になって、
名前を紡ぐと、
雪貴はすぐに微笑み返して
墓石から視線を逸らした。
「蝋燭と御線香、
お願いしてもいい?」
そう言った私に雪貴は、
目の前で蝋燭と御線香に
ライターで火を灯すと
御線香の半分を私に手渡し
蝋燭だけを左右に灯す。
私の方の準備が終わったのを確認して、
お互いアイコンタクトを交わした後、
雪貴が先に御線香をお供えして、
手をあわせる。
その後に続くように、
御線香を供えて、手をあわせる。
隆雪さん、
いつも見守ってくれて有難う。
暫く、隆雪さんとの時間を過ごして、
墓石から離れたのと入れ替えに、
聴きなれた声が届く。
「久しぶりやな。
雪貴、来とったんか?」
姿を見せたのは、
久しぶりに見る
十夜さんと憲さん。
「ご無沙汰してます」
二人に頭を下げる雪貴。
「距離……遠いなぁー。
なぁ、雪貴。
距離、遠いわ。
それを決めんのは、
雪貴自身やけどな。
会議抜け出してきたから、
トンボ帰りなんやけど、
月命日くらい来たいやん」
そう言うと、
憲さんが手に持ってた
荷物を墓石の前に
一つずつ取り出して並べていく。
シェーカー?
次から次へと取り出されるアイテムは、
お墓の前には
似ても似つかわないものばかり。
やがて十夜さんは、
それらをささっとシェーカーの中にセットして、
振りはじめるとあっという間に、
紅玉の液体を完成させてグラスに注ぎ切る。