いつか君に届け
闇の迷路
『よお!大輔!久しぶり。高校生活はどうっすか?』

『慶太郎!どうしたんだよ!誰にやられた?お前進学校だろ!』

『辞めましたよ。俺なんかが進学校なんて似合わないでしょ?所詮クズですからねー。大輔!俺まだ死なないの?』

『はあ?何言ってんだお前!バカだろ!とりあえず家入れよ。ほら!顔冷やせ!お前学校辞めてどうしてたんだよ?なんで連絡してこねーんだよ!』

『死ぬ場所がどこにあるのかさまよってましたよ。そしたら変な奴にからまれまして。でも俺は負けてませんからね。きっちり片付けときました。大輔!ビールある?』

『あぁ。慶太郎!俺、お前には生きててほしいよ。お前なんでそんなに死にたがるんだよ!そんな急がなくたってどうせ人間みんないつか死ぬんだよ。急いで死ぬ必要はねーだろ。俺ともっと遊んでからでもいいじゃねーかよ!』

『そうっすね。じゃあ何して遊びますか?俺はもう帰る家はないんで貯金が底をつけばもう終わりだけどな』

『慶太郎!今日俺の高校の先輩と遊ぶんだよ。お前も付き合えよ。2つ上の先輩なんだけど望さんは顔広いから俺らが生きる道あるかも知んねーだろ』

『生きる道か。なんで生きるんだろうな』

俺は夏の終わりまで死に場所をさまようかのように喧嘩に明け暮れ壮ちゃんが迎えにきてくれるのを待っていた。夏の終わりと共に俺も壮ちゃんの所にいけると思いながらずっと待っていたんだ。それでも壮ちゃんは俺を迎えには来てくれなかったね。その年の冬休みを迎える前に結局大輔も高校を退学になった。俺達はまだ16歳だ。大輔の高校の先輩である望さんと俺らはつるんでいて望さんの先輩である水樹さんと出逢う事により俺と大輔はここから生きる道ってやつを見つけた。俺らにとって夢も希望もない単なる生き延びるだけの道だ。水樹さんはヤクザであり俺はどうにでもなれと思っていた。早く壮ちゃんの所に行けそうだとその時はそう思うことが俺の生きる道だった。俺達は水樹さんに拾われ食う事と寝る事は出来た。

『おい!大輔!慶太郎!お前らちゃんと掃除したのか!なんだこれは?もっと綺麗に磨け!わかってんのか!コラ!便器にてめぇらの面突っ込めるぐらい綺麗に磨きやがれ!ボコボコにされてーのか!てめぇーら!』

『すいませんでした!もう一度やり直します』

『慶太郎!お前は?』

『やりましたよ。充分綺麗じゃないっすか』

『お前は本当になめてるよな!この前肋骨折ってやってもわかんねーんだもんな!死ぬか!慶太郎!』

『そうっすね。どうぞ。俺はいつでもいいっすから。早くやっちゃってください。っうぅ。痛っ。ハァハァ。っぐぅ』

『水樹さん!すいません!やめてください!慶太郎にもちゃんとやらせますから!』

『大輔!大丈夫だ。心配するな。お前は便所掃除してこい!』

『俺は慶太郎を失いたくないっす!やめてください!お願いします!』

『ほんとにお前らはバカだな!慶太郎!大輔!お前ら自分で食っていけるようになれ。俺のいる世界に来なくていい!お前らホストをやれ。慶太郎!自分で稼いで食えるようになってみろ。お前らに紹介したい人がいる。しっかり指導してもらえ!』

『水樹くんが拾った子達ってこの子達なの?かわいいわね。まだ子供じゃない』

『はい。ママに指導して頂ければこいつらはやれると思います。こいつらを俺の世界には入れたくないんです。慶太郎はちょっと手がかかるかも知れませんがよろしくお願いします。俺より出来はいいはずです』

『水樹くんがそこまで気にかけるなんて珍しいわね。わかったわ。しっかり育ててあげるわよ』

『ありがとうございます。大輔!慶太郎!今日からママの元で学んで自分で稼げるようになれ!慶太郎!死ぬのはてめぇで稼いだ金を得て俺が食わしてきた恩を返してからにしてくれよ!自分で稼げねーんだったらどこででも犬死にしてろ!』

『わかりました。水樹さんに世話になった分しっかり倍にして返しますよ。俺、借りは作りたくないんで。ママ!俺達に仕事を教えてください!お願いします!』

『わかったわ。あんた達だったらすぐに稼げるようになるんじゃないかしら?かわいい顔してるもの。でも顔だけでホストは成功しないわよ』

『はい。全て教えて下さい!』

俺と大輔は水樹さんの慕うママに徹底的に仕込まれ俺達は17歳になる年ホストとしてデビューした。大輔!俺もお前には生きててほしいからもうしばらく付き合うよ。俺達が生きるだけの道とりあえず歩もう。俺達が迷いこんだ闇の迷路に出口はあるんだろうか。大輔!もし俺達が二十歳まで生き延びていたら俺達はこの闇の迷路から少し光りを見つけた時なのかな?俺達は大人になれるんだろうか。壮ちゃん!俺は今年17歳になるよ。またそっちで俺におめでとうって言うの?もうおめでとうって言わないで。おめでとうはもういらないよ。俺生まれたくなかった。こんな事を言うとまた壮ちゃんに哀しい顔させちゃうのかな。でももう俺は生きたくない。疲れたよ壮ちゃん!俺も自殺していい?怒るよね。でも生きる意味なんか俺には見つけられないよ。

『あっ!ごめんなさい。大丈夫ですか?』

『大丈夫じゃない。あなたのヒールに踏まれて足の指折れたかも?』

『え?すいません!病院に一緒に行きます!歩けますか?』

『病院はいいから俺と昼飯付き合ってよ。夕方から仕事なんだよね。今食っとかないといけないんだ。買い物も終わったし。俺の足踏んだんだから昼飯ぐらいいいでしょ?奢るからさ!』

『だって足痛いんじゃ?折れたかもって言いましたよね?』

『そうだね。言ったかも。でも痛いよ。とりあえず行こうよ!俺腹減ったの!君の名前は?俺は慶太郎。もうすぐ17歳。君はタメぐらいだよね?』

『私は千佳。18歳です。あなたより年上だと思うんですけど。17歳がスーツ来て何の仕事?高校は?私は短大で保育士を目指してます』

『へぇー。えらいね。年上だったんだ。千佳ちゃん!俺と付き合う?俺はホストだけど特定の女はまだいないよ』

『結構です!足は痛いんじゃなかったの?大丈夫なら私は帰ります』

『ちょっと待ってよ!昼飯ぐらい付き合ってくれたっていいじゃん!俺が誘うなんて滅多にないよ!俺これでもモテるんですけど』

『そうでしょうね。だったら私みたいなのとじゃなくてもランチぐらい一緒に食べる女の子はいっぱいいるんでしょ?じゃあお仕事頑張ってください!私もバイトあるんで』

『俺は君と食いたいの!千佳ちゃん!バイトって何してんの?夜の世界?』

『違います!あなたとは違うの!ただの居酒屋です!』

『居酒屋?大変だね。酔っ払い相手だし客層低いでしょ。安いもんね!学生とか来るじゃん!そんな所で働かなくても俺がお小遣いぐらいあげるよ』

『結構です!』

『んじゃ連絡先教えて!俺の足の指折れてたらどうすんの?俺も仕事出来なくなったら困るんですけど』

『わかりました。じゃあ折れてたら連絡下さい。医療費は払います。失礼します』

マジか。ガードかてーな。俺が1回で落とせないなんてちょっとムカつくじゃん。千佳ちゃんか。せっかくかわいい顔してるのにちょっと地味だな。やべっ!遅刻する!また殴られるじゃん。梅雨が明けたら嫌な夏がまたやってくるな。よし今日も稼ぐぞ。俺がナンバーワンホストなんだ。誰にも渡さねーよ。水樹さん!俺はあなたに借りを返せます。充分な程に。ありがとうございます。
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