いつか君に届け
耳をすますと見えてくるもの
『慶太郎!お前はやれば出来る子だよ。それなのに思春期と言う壁を利用をしてお前は逃げているよね。慶太郎!自らの疑いに勝ちなさい。どうせ自分はだとか卑下してしまうだろ。そういう自分自身を疑う事から逃げる気持ちが始まるんだよ。そういう時には耳をすますと見えてくるものを感じ取れるようになりなさい。目には見えなくとも見えるものがこの世界にはあるんだよ。それも偉大な力によってね。いつか慶太郎に見えて自らの疑いに勝つ日が来ると俺は信じているよ』

『何それ?壮ちゃん!意味わかんないよ!もう遊びに行ってもいいでしょ!』

13歳の俺にそんな難しい事を言わないでよ。意味わかんねーよ。壮ちゃんの説教は長いし難しいんだよ。

『慶太郎くん?慶太郎くん!』

『あー。ごめん。ぼうっとしてた。千佳ちゃん!何食べるか決まった?』

『うん。決まったけど慶太郎くんは?』

『あー俺は千佳ちゃんと同じものでいいよ。ランチのあとはどこへ行きたい?千佳ちゃんの行きたいとこへ連れて行くよ。やっと俺とデートしてくれるんだからご希望に応えたいと思ってますよ』

『んー慶太郎くんが連れて行きたいと思ってくれるところがいいな。ホストなんだからデートもいっぱいしてるんでしょ?』

『あのさーホストにたいして千佳ちゃんは偏見があるんじゃないの?俺って軽そうに見える?』

『うん。見えるよ!私はたくさんの女の子の中の1人でしょ?』

『あーそう。俺の気持ちをわかってもらえるよう頑張りますよ。海までドライブしようか?』

『うん!いいよ!』

壮ちゃん!俺は18歳になりました。17歳の時に出逢った千佳ちゃんと俺は付き合う事になったよ。17歳の頃からかなり真剣にアプローチを始めたのになかなか相手にされなくてようやくデート出来るまでになったんだ。俺が女と付き合うのに1年もかかるなんて初めてだよ。なぜだか千佳ちゃんとは運命みたいなものを感じる。17歳の誕生日のあの日に電車で偶然出会っていたのも今思えば運命かなって。あれから俺は少しずつ意識していたように思うよ。だけど全然相手にされなかったんだけどね。初めて俺が本気で恋をしたのかも知れない。でも俺は愛がわからないから彼女を傷つけてしまうかな?壮ちゃんは言ってたよね。自らの疑いに勝ちなさいって。耳をすますと見えてくるものっていったいなんなの?13歳の時にはまったくわからなかったけど18歳になっても俺はまだわからないかも。俺は千佳ちゃんを愛せる人間なんだろうか。この疑いに勝たなきゃいけないのかな?

『千佳ちゃん!波の音が千佳ちゃんにはどういうふうに聴こえる?』

『えっとそうだね。凄く穏やかな今日は優しい音に聴こえる。慶太郎くんは?』

『俺もだよ。海は俺をいつも優しく包んでくれるんだ。だから俺は海が大好きでいつも癒してもらってる。千佳ちゃん!俺、千佳ちゃんと遊びで付き合う気はないから。だから千佳ちゃんが俺の事を信じてくれるまで俺は指1本触れないよ。それぐらいしか俺が千佳ちゃんに気持ちを届ける手段を見つける事が出来ない。俺はホストだし店を任されているけどまだまだ店にも出るから千佳ちゃんの不安が取れなきゃ俺は千佳ちゃんに触れる資格がないと思うから』

『慶太郎くん!ありがとう。少しずつお互いを理解していこうよ!今日は本当に気持ちいいね。優しい音。素敵だね』

『うん。自然は偉大だからね』

壮ちゃん!俺は千佳ちゃんに恋をしています。俺が恋をしてもいいのかな?18歳になった俺は店を任されるようにもなったし来年には自分の店を持つと思う。車の免許も大輔と一緒に取ったよ。親友であり兄弟みたいな大輔に協力してもらいながら店も順調です。それから俺来年大学受験します。螢桜大学だよ。壮ちゃんの母校です。壮ちゃんはいつも俺にやれば出来る子だって言ってくれていたよね。店が忙しいなりにも勉強を頑張っているよ。親父に認めてもらいたいからなんだけど。努力した分自信に繋がるんだよね?俺はこれから店を持ちながら会社を立ち上げようと思っています。大学にはあまり通えそうにはないよ。別に学びたい事があって受験したいわけでもないし卒業は考えていないんだ。ただ会社を立ち上げるにあたって自信が欲しいのかもね。親父には負けたくないし。自らの疑いに勝ち俺は会社を立ち上げてみます。それから耳をすますと見えてくるものをちゃんと見つけたい。今の俺は千佳ちゃんを大事にしたいって気持ちが見えるんだけどこれが目には見えないけど耳をすますと見えてくるものなのかな?この答えがわかるのはもう少し時間がかかりそうだ。だって俺は愛の伝え方がわからないんだから。そもそも愛とはどんな感じなんだろう。愛は見えないものだからこれも耳をすまさなきゃきっと見えないんだよね?ただ今は彼女を傷つけることなく大事にしたい。今年の夏もまた母なる海に癒されました。俺サーフィンはかなり上達したよ。ユズルには負けるけど今でも一緒に波乗りしています。千佳ちゃんに聴こえる優しい波の音と俺に聴こえる優しい波の音が一緒だったらいいな。ねえ!壮ちゃん!壮ちゃんにも優しい波の音が聴こえていますか?俺少しは大人に近づいているの?相変わらず誕生日は忘れているし哀しくなるから嫌いだけどホストの仕事して誕生日を迎えることには慣れてきたかな。店を持つんだからそれなりに努力しました。俺は成長できているのかな。壮ちゃんが俺に教えてくれた事を最近よく思い出しては淋しくなります。もっともっと壮ちゃんと時間を共にしていればよかった。バカな俺は遊びに行ってばっかりだったよね。壮ちゃんと過ごす時間が余りにも短いだなんて思ってもいなかったんだ。壮ちゃんが俺のそばにずっといて当たり前なんだと思っていたからだよね。でも壮ちゃんの言葉を思い出しては壮ちゃんを感じているよ。まるで俺の近くで語りかけてくれてるように聴こえます。壮ちゃん!仕事頑張るから見ててよね!
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