いつか君に届け
想い出
壮ちゃんから二十歳になった俺へ手紙を届けてくれた人奥田貴之と言う人にお礼が言いたくて俺は会いに行く事にした。壮ちゃんの母校であり俺が中退した大学。奥田貴之さんは螢桜大学付属病院の医師である事がわかった。

『すいません。奥田さんですか?初めまして。こんにちは!高見慶太郎と申します』

『やあー!初めまして!奥田です。君が慶太郎君か。逢いたかったよ。手紙を届けるのが遅くなって悪かったね。成人式の日に届けてくれって壮一郎に頼まれていたのに3ヶ月も遅れてしまって申し訳ない。急なオペが入って渡米していてね。帰国も予想以上に長引いてしまったんだ。本当に悪かったね』

『いえ。お忙しいのにわざわざ手紙を送って頂き本当にありがとうございました。俺は壮ちゃんから手紙が届くなんて思ってもいなくて凄く驚いたんですけど嬉しくて数年ぶりに泣く事が出来ました。奥田さんのおかげです。ありがとうございます!』

『慶太郎君!成人おめでとう!僕は君に逢えるのをずっと楽しみにしていたよ。壮一郎と僕は同級生なんだ。壮一郎は国家試験に落ちて医者になる事に挫折していたから医師としては僕の方が先輩だけどね。慶太郎君の事は壮一郎から聞いていたよ。君が幼い頃からね。壮一郎がもう1度医師を目指し努力を始めたのは君の影響なんだよ。慶太郎君のベビーシッターとして君を育てている間にあいつは変わった。そして君をとても愛していた。君は壮一郎の愛情を感じる事が出来たかい?』

『はい。俺は壮ちゃんに愛されました。俺を愛してくれました』

『そう。慶太郎君!君を抱きしめていいかい?壮一郎の代わりに』

『はい』

『本当に大きくなったね。立派な大人だ。イケメンだし言う事なしじゃないか』

『俺は立派なんかじゃないです。壮ちゃんに迷惑と心配しかかけてなくて怒られるような事しかやってきませんでした』

『子供はどこの子もみんな親に迷惑や心配をかけるもんだよ。僕は12歳の君をあの日見ていた。壮一郎と一緒にね。君はよく頑張った。辛かったね。二十歳まで君が生きてくれるのかとても心配だった。壮一郎が最期に呼んだのは君の名前だったよ』

『っく、うっく、あ、ありがとうございます、っく、お、俺はどうすればいいですか?っく、うっく、壮ちゃんに何をしてあげられますか?うっく』

『君が生きることだよ慶太郎君。負けちゃダメだ。壮一郎の分まで君に生きてほしい。どんなに辛いことがあっても生きる事を放棄した生き方はしないで欲しい。約束してくれるかい?』

『うっく、は、はい!っく』

俺はホテルのラウンジで泣いてしまった。奥田さんは壮ちゃんの友人に相応しく温かい人だったからだ。俺本当に壮ちゃんに泣かされてばっかりじゃん。壮ちゃん!俺は本当に1人でなんか生きてない。壮ちゃんがいなくなって1人ぼっちだって思っていたけどそうじゃなかった。大輔達もいたし俺の知らない所で俺の心配をしてくれてる人がいたんだね。壮ちゃん!俺は壮ちゃんみたいな男になれるよう努力します!

『あっ!慶太郎君!大事な物を君に届けるよ。壮一郎から預かったもう1つの届け物だよ。二十歳になった君と逢うことが出来たら成人のお祝いに渡してくれとね』

『っく、なんですか?っく、アルバム?っく』

『うん。幼い頃の君だよ。3年間分と12歳から14歳の頃の君のアルバム。壮一郎の宝物だったんだ。かわいいだろ。僕も何度も見せて貰ったし壮一郎の病院のデスクにはいつもこの写真たてに入ってる君の写真を飾っていた。病院を移る度にね。慶太郎君!君は本当に壮一郎に愛されていました。わかってくれるね?』

『うっく、っく、はい!っく、ありがとうございます!っく、うっく』

もうマジずるいよ!壮ちゃん!こんなの無しだよ!俺をどんだけ泣かせるんだよ。俺への二十歳のプレゼントは一生の宝物にします。ありがとうございました。壮ちゃんが作ってくれていた俺のアルバムにはたくさんの俺が写っていた。いつの間に撮ったんだよって写真だらけだ。幼稚園の運動会やお遊戯会に壮ちゃんは来ないって言ってたくせに。壮ちゃんの嘘つき!ちゃんと見ててくれたんじゃん!チャイルドシートで俺が寝ているとこや塾での俺。泣いてる俺。ご飯食ってる俺。水族館や動物園は壮ちゃんと一緒に撮ってもらった記憶があるけどあとのはほとんど知らねーよ。盗撮かよ。中学生になる前から一緒に住み始めたから入学式前の写真やゲームしてる俺。寝てる俺。反省中の俺。本当にたくさんの写真がアルバムに残されたいた。写真には壮ちゃんが手書きで日付と簡単な一言が書き込まれていた。壮ちゃん!尻出して反省してる俺の写真はいらねーよ!そんなとこ撮らないでよ!俺と過ごしてくれた毎日を全部想い出に残しておいてくれたんだね。ありがとう!壮ちゃん!俺も自分の事務所のデスクに壮ちゃんと一緒に写った写真を飾っておきます!本当にいっぱい俺を愛してくれてありがとうございます!
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