いつか君に届け
弔い
俺と大輔は翔太の自殺後お互いに何も触れる事なく日々の忙しさに身を任せていた。倒れそうなぐらい忙しい方がいい。そうすれば悲しんでばかりいられない。悲しむ暇すら与えないかのように体を酷使し俺も大輔も仕事に没頭していた。

『慶太郎さん!おはようございます!』

『あー。おはよう!伊織!大輔は奥?』

『はい!大輔さんは奥にいらっしゃいます!』

『つうか俺マジきもい!翔太の隣なんか早くかわりてーよ。死ぬなら他所で死ねっつうの』

『おい!コラ!怜恩!もう一回言ってみろ!』

『あっ!いや、あの!すいません!慶太郎さんが来てるとは気づかなくて。っぐう。うぅ』

『お前の同僚だろ!何が他所で死ねだ!てめぇ!なめてんのか!死なせた俺ら全員が悪いんだろ!翔太が追い詰められている事に誰一人気づかなった俺らが悪いんじゃねーのか!1番の責任は俺だ!お前ら仲間が死んだんだぞ!そんな言い方ねーだろ!』

『慶太郎!やめろ!』

『っぐぅ、あっ、うぅ、す、すいません、うぅ、すいません!っあ、ぐぅ』

『ハアハア!俺の前で二度と死ねなんて言うんじゃねーよ!てめぇーら全員に言ってんだ!怜恩だけじゃねーぞ!翔太の死をけなす奴は俺の店にいらねーんだよ!辞めてくれ!仲間の死を弔えねーような奴は俺の店に必要ない』

『はい!すいませんでした!』

『っうぅ、ハアハア、け、慶太郎さん、すいませんでした!っう、ハアハア』

『慶太郎!もういい!やめろ!落ち着けよ』

『落ち着いてられないでしょ。もう店閉めてくれていいっすよ。怜恩みたいな考え方の奴が1人でも居るならこんな店は必要ないでしょ。いい接客なんか出来るはずもない』

『わかったから落ち着けよ!慶太郎!とりあえず今日は店閉めて全員で話し合いをする。俺がちゃんとこいつらに説明しなかったから悪いんだよ!伊織!お客さんに帰って頂くよう瑛太達に伝えてくれ!』

『はい!わかりました!』

『慶太郎!お前は帰れ。俺が話しをする。お前は疲れてる!帰って休め!』

『俺が疲れてるから八つ当たりしてるっつうのか?もういらねーよ!こんな店!潰せ!大輔!』

『それはできねーよ!もうお前は帰れ!俺がこの店の責任者なんだよ!慶太郎!たまには俺の言う事も聞け!俺に責任があるんだ!お前は俺に任せてんじゃねーのかよ!』

『わかったよ。お疲れ。大輔』

『あぁー。お疲れ。慶太郎!』

あー何やってんだ俺。バカだ。そんなもんだよな。人間なんてみんな。怜恩がまともで俺がまともじゃねーんだろう。お前らにとってはたかが同僚の死だよな。自分には関係ねーよって感じか。それが普通だな。死にたい奴は死ねばいいんだろ。ライバルが減ってむしろ嬉しいぐらいか?そんなもんか。くそったれの世の中だもんな。

『お兄さん!飲んでいかない?』

『あーいいよ。いくらでも飲ませろ』

翔太!本当に悪かった。お前の事は俺が死ぬまで覚えているよ。お前に何の力にもなれず申し訳ない。俺役立たずだろ。だから言ったじゃねーか。俺はクズだってな。なのにお前は俺に憧れると言ってナンバーワンまで上がってきた。お前の努力でな。よく頑張ったな翔太。またいつか一緒に飲もう。
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