月夜の翡翠と貴方【番外集】
「お疲れ様です」
彼女はひとつに結った銀髪を揺らしながら、「ありがとう」と爽やかに言った。
向こうを見ると、スジュナとラサバが、せわしなく動いて、役者たちのフォローをしている。
スジュナはその小さな身体で、きちんとこの劇団の一員を全うしているようだった。
「スジュナちゃんもね、最初の頃は失敗ばかりだったんだけど…めげずに頑張っていたわ。今ではラサバよりも働き者かもしれない」
嬉しそうに、くすりとクランが微笑む。
…よかった。
スジュナがこの劇団と『家族になる』という決意をしたあの目は、きちんと向き合おうとしている目だったから。
「…安心しました」
ぽつりと呟くと、クランは私の顔を見つめて、ふふ、と笑った。
「え…な、なにか、おかしかったですか」
「いいえ。ジェイドさん、なんだか本当にスジュナちゃんの『お姉さん』みたいだから」
あの子も幸せものね、とクランがスジュナを見つめて言う。
…説得の手伝いをしたとはいえ、やはりおこがましかっただろうか。
顔が熱くなるのを感じていると、横から小さな笑い声が聞こえた。