月夜の翡翠と貴方【番外集】


そして、それを読んで、目を見開く。

簡潔な、内容だった。


『お久しぶりです。

公演、ふたりで見に行きます。

スジュナちゃんが、主演だと聞いて。

あれから十年、スジュナちゃんの成長を楽しみに、そちらへ向かっているところです。

当日、会えるかわからないけれど、花束を持っていくね』


…あの、ふたりだ。


名前は書かれていないけれど、きっと、あのふたりだ。

覚えているに、決まってる。

私が今ここにいるのも、

この方達のおかげなのに。


ふと、手紙の最後に、

『追記 あのパン屋さんは、まだやっていますか?』

と書かれているのを見て、思わず笑ってしまった。


…出会ったのは、まだこの手紙を全て読むことができないような、

そんな幼い頃。



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