月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…セルシア様」
「私はもっと、貴女と色んなお話がしたいですわ。私もあなた方のお力になれる事があるのなら、いつでも」
セルシアは、涙ぐむ私をまっすぐに見つめて、綺麗な声でそう言った。
…もしも私がまだ、リズパナリのマリアで。
令嬢としてセルシアと会っていたら、きっとこんな風にはなれなかった。
今の、私だから。
ルトと一緒に、旅人として彼女と出会った、私だから。
「あなた方がこの村のため、私のためにして下さったこと。このご恩は、いつか絶対にお返し致します」
セルシアは立ち上がると、私の髪を結い始めた。
鏡に映る私の顔は、情けない表情をしていて。
深緑のリボンがしゅるりと結ばれ、セルシアが優しく笑ったときにはもう、涙が溢れていた。
「ジェイドさん、出来ましたよ。どうですか?」
耳より高い位置で右横に結ばれた碧の髪には、深緑のリボンが可愛らしく結ばれていた。
私はもう一度鏡ごしに彼女と目を合わせると、精一杯に微笑んだ。
「…うん、いい感じ。ありがとう、セルシア」
…幼かったあの頃、母は私の髪を梳かす度に、『綺麗ね』と呟いていた。