月夜の翡翠と貴方【番外集】
「私ね、この国のこと、嫌いにはなれないの。憎んでいるし、嫌な思い出だってあるけど…でも、優しい人が、たくさんいる」
この国にいたから、ルトに会えた。
たくさんの人と、知り合うことができた。
ネオが震えた声で、「うん」と言う。
「…知ってるわ、そんなこと。…タツビと会えた、国だもの」
驚いた顔をして、タツビが顔を上げる。
ネオは恥ずかしそうに頬を色づかせ、微笑んだ。
タツビが照れ臭そうに、目を逸らす。
私はふたりを見て、目を細めた。
「……ネオが貴族でも、そうじゃなくても。タツビくんは、ネオのことが好きなんだよね」
瞳に涙を浮かべたネオが、タツビを見つめる。
罰が悪そうに頭をかいて、タツビは小さく頷いた。
瞬間、ネオの顔が赤く染まる。
そのやりとりが面白くて、私は思わず笑った。
それからしばらくしても、ルトが来ることはなかった。
話題もつき、段々とネオとタツビの表情も暗くなってくる。
…きっと、朝になったら私達はここから連れ出されるのだろう。
それまでに、どうにかしなくてはならない。
まだ、外は暗い。
けれど、もうすぐ明るくなってくるだろう。
私は立ち上がり、眠りそうになっているふたりを見た。