愛して


「な、何でそんな……っ」


ワナワナと唇を震わせて怒ったような素振りを見せる博人。けれど、僕にとってはそんな博人の行動も愛しいだけで。
僕はふふっと笑うと、そっと博人の頬に手を添える。怯えるような、睨むような顔つきも好き。大好き。


「……、だって博人に近付くから。ねえ、僕はずっと博人のこと見てきたんだよ?ねえ、ねえ、ねえ!」


僕が大きい声を出す度ビクッと肩をあげる姿も、怯える姿も全部全部ぜーんぶ可愛いし愛しい。
愛してる、愛してる、愛してる、愛してる!僕以上に彼を愛する人なんていないよ。僕は博人の両親よりも博人を愛してるから!
なのに、なのになのになのに……!何で博人は僕を否定するの?それも愛情の裏返しって奴なのかな。素直になれないのかな、博人は。
仕方がない僕の恋人。


「嘘だ……!だってお前はっ、色んな女の子と付き合ってただろ!?」


僕は一瞬キョトンとしたような顔をする。何言ってるのさ、博人。博人は気づいてなかったんだね、そうかそうか。
僕が付き合ってたあの女どもがどんな女だったか。


「ふふっ、本当に博人は真っ直ぐだね…」


「……?」


訳が分からないというように首を傾げる博人。


「僕が付き合ってた女どもはね、元は博人が好きだって言ってた女どもだったんだよ?」
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