副社長は溺愛御曹司
私のクリスマスプレゼントをリサーチする、という名目でやって来たこの通りには。

大手電子機器メーカーのショールームの入った、スタイリッシュなビルが、どんと建っている。

この場所を指定したのは私だけど、来たら絶対にヤマトさんは、そこに寄りたがるに違いないと確信していた。


さっすが、とヤマトさんが嬉しそうに笑って、煙草を消したと思ったら、すぐに次の煙草に火をつける。

こうして休日を過ごすと、よく勤務中、耐えてるなあと思うくらいのチェーンスモーカーぶりだ。


街はもう、イルミネーションだらけで、音楽も店頭の装飾も、すっかりイベントの雰囲気だ。

ここ数年は、祐也とあんな関係だったおかげで、私はこういうイベントの時期に、それらしいことをした記憶がない。

今年は、ヤマトさんと過ごせるんだなあと思うと、純粋に嬉しくなった。



「ヤマトさんは、何か、ほしいものありますか?」

「来春出るプロセッサと、マザーボード」



自分で買ってください、と言うと、わかったよ、とふてくされた声がした。





遅めの昼食も楽しんだところで、行こっか、と差し出される手に、自分の手を乗せる。

それを軽く引き寄せられて、頬にキスを受けた。

店内なのに、とついあせって周囲を見回す。

そんな私を、彼が笑う。



予想していたような、していなかったようなで、とりあえず今日、驚いたことには。

ヤマトさんは、ものすごくベタベタしたがりだ。


屋外だろうが屋内だろうが、人目があろうがなかろうが、おかまいなしだ。

あまりそういう経験のない私は、別に嫌じゃないけど、なんというか、どうしたらいいのかわからず、いつも固まる。

それが面白いらしく、ヤマトさんはまったく改める気配を見せなかった。

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