副社長は溺愛御曹司
それも、楽しいんじゃないかなあ、と我ながら無責任なことを考える。

だって、秘書さんなんだし。

ちょっと、そのくらい、甘えてみても、いいんじゃないだろうか。


俺の秘書さんなんだし。


そう考えて、あれっと思った。

なんだろ、いい響き。


俺の、秘書さん。



俺の秘書。





「そうですね、中途の求人を出しましょうか、さほど待たずに、応募が来ると思いますよ」

「頼むね。できたら俺も面接とか、したいなあ」

「変な質問しないと約束してくださるんなら、いいですよ」



…たとえばどんなのだよ、と面白くない気分で訊くと、木戸が笑った。

ヤマトより2年上の、この人事部長兼秘書課長は、実は元開発で。

ヤマトが入社して、まだプログラマをしていた頃、同じチームだったことがあった。

この会社で言うところの、中堅と呼ばれる年代に差しかかった時、のちに爆発的ヒット作となるタイピングソフトを企画し。

他社からヘッドハンティングを受け、それがきっかけで、人材というものに興味を持ったという変わった思考の持ち主だ。



「自分が抜けるんなら、自分レベルの誰かを入れてからじゃないと、会社の損失だと思いまして」

「すごい自信家だよね」



なかなかできないよ、そんな発言、と当時からヤマトは、その話になるたび、あきれて、笑う。

採用という仕事の可能性を追求したくなったらしい木戸は、希望を出して人事部へと異動し。

結局開発からは、いい人材がひとり欠けたことになるのだけど、木戸の採用で入る社員は、みな意欲が高く、その穴を埋めつつある。


若干ひねくれた経歴だけれど、それは結局、この会社への愛着の表れでもあり、創立者の息子として、ヤマトは嬉しかった。



「にしても、思いきりましたね。ヤマトさんは、彼女を手放さないかと思ってました」

「え?」

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