副社長は溺愛御曹司
「…はい」
「さっき、初めてじゃないって、言ったよね?」
なんだか、申し訳ないような、穴があったら入りたいような気持ちで答えたら、先輩がさらに不思議そうな顔をした。
えっ、私が、そんなことを言った?
そんなわけない、と思った瞬間、わかった。
先輩からの、3つの質問だ。
緊張でガチガチになりながら、教わったとおり、やみくもに答えたから、何を訊かれたかなんて、覚えてない。
あの質問の中のどれかひとつが、そのことに関する内容だったんだ。
結局、嘘をついてしまったことになる私は、蒼白になり、何も言えず、先輩の顔を見あげる。
腹を立てられても仕方ないと思ったのだけれど、先輩は、どちらかというと、戸惑ったような顔で、私を見つめていた。
「なんで、嘘ついたの?」
「嘘っていうか」
先輩のほうが傷ついたような声を出したのに、緊張してて、よくわからなくなってて、と慌てて弁解する。
先輩は、身体を起こすと、私の上からどいて、芝生に座りこんだ。
私も身体を起こして、向かいあう形に座ると、胸元を押さえながら、必死に言う。
「あの、初めてだと、ダメですか」
「ダメだよ」
「どうしてですか」
私は、先輩に、初めての人になってほしいのに。
今日はさすがに、いきなりで動転したけど、ちゃんと覚悟さえできていれば、こんなふうにみっともないことには、しないのに。
やっぱり、経験のない子を相手にするのは、面倒だったり、重かったり、するんだろうか。
すがるような思いで、先輩を見ると、彼は困ったように笑って、首を振った。
「初めては、特別な人としなきゃ、ダメだからだよ」