副社長は溺愛御曹司
sched.05 不意打ち


「あー、ごめん! ありがとう」



預かっていたワイシャツを延大さんに渡すと、どうやら彼は忘れていたらしかった。

そもそもなんでクリーニングに出したんだろう、という私の疑問を読みとったのか、ふふ、と意味深に笑う。



「ちょっとね、汚しちゃって」

「お食事ですか?」



着替えるほど汚すって、相当だ。

私のデスクに腰かけていた延大さんは、ヤマトさんとはまた違った方向に整った顔をにやりと歪ませて。



「神谷ちゃんには、まだ早いかなー?」



そう言って、私の口元を人差し指で軽く叩いた。

あっ、もしかして。


口紅?



「何やってんだよ」



その後頭部を、いつの間にか入ってきていたヤマトさんが、分厚い封筒でバシンと叩く。

いて、と頭を押さえながら振り向いた延大さんに、ヤマトさんが封筒を渡した。



「スケベ兄貴め、わきまえろ」

「今日の神谷ちゃん、可愛いんだもん」



ただドレスを着ているだけです。

この人、見た目も人柄もいいのに、ほんと、言動がうさんくさいな。



「俺につきあわせちゃったんだよ。午後から宴会なんだ」

「あ、なるほどね」


< 43 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop