副社長は溺愛御曹司
しわになりにくいシフォンのブラウスと、念のため、予備のジャケットに、どうとでも着まわせるスカート。
新品のストッキングに、下着を数セット。
明日からの二泊ぶんの出張準備をしていたら、ふとテーブルの上のすずらんに目がとまった。
綺麗なセピアに変身したそれは、ゆるく束ねられて、再びブリキのバケツに立っている。
あれ以降、採用の進捗は怖くて聞けていないけれど。
きっと、私の秘書生活は、もう秒読みだろう。
次に来る、誰かにも。
ヤマトさんはこうして、花を贈るんだろうか。
いつもありがとうね、って、にっこり笑うんだろうか。
手帳を開いて、出張先でのスケジュールを確認した。
朝は駅に直行して、全員同じ新幹線。
集合前に、ヤマトさんの軽食と飲み物を買っておくこと。
車内でお弁当やおにぎりなど、臭いのあるものを食べるのを嫌うので、栄養補助のビスケットとか、そういうものを。
到着したら、すぐに先方の会社を訪れて挨拶。
簡単なランチミーティングがあり、私たち秘書はこの間、待機となる。
やっておくべきことがないか、ヤマトさんに訊くこと。
もし時間があけば、おつきあいのある秘書さんたちにご挨拶に回りたい。
午後に、宿泊先にチェックイン。
ヤマトさんは、やっぱり禁煙、朝食なし、モーニングコールなし…
そこまで考えて、なんだか疲れてしまった。
私、いったい。
どうしたいんだろう。