Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


ーーあー…かったりぃ……なんか、
おもしれえテレビねえかなあ…


奈緒子は、ハッとした。


恵也の視線の先は、
テレビではないことに気付く。


もっとどこか遠く。



ーーー恵也は、ずいぶん髪が伸びた。


目にかかるライトブラウンの前髪。

その下のまぶしげに見える一重まぶたの目と不健康な白い頬の横顔を見て、奈緒子の心に不安がよぎる。



(もしかしたら、恵也は奈緒子の身体に
飽きてしまったのかもしれない…)


前はこんな風に思わなかったのに。



ーーなんか、おもしれえことねえかなあ……


蝉の鳴く声と
恵也のつぶやく声が重なる。



おもしれえことねえかな…


何気ない恵也の一言が、少しずつ2人の仲が変わってきている証拠のような気がして、16歳の奈緒子は怖くなる。



ーーーそんなわけない。


恵也は奈緒子が初めての恋の相手であり、無垢な身体を捧げた運命の男だ。


それなのに、恵也は時々、
奈緒子を傷つけた。


生理の時。


奈緒子は生理痛でお腹を抱えているのに、恵也は自分の欲求が叶わないと知ると露骨に不機嫌になった。


ーー…んだよ。ヤレねえのかよ、
つまんねえな!


吐き捨てるように言って。

奈緒子に背を向け、無視するような態度をとった。


そんな時、奈緒子は恵也の横暴さと心の冷たさを感じて、泣きたくなった。


優しくて面白い、ひとつ歳上の彼氏のはずなのに……





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