Garnet~大好きの伝え方
ただ、痙攣しているだけにも見えたけど、

「たしかに僕は、自分から身を引いた。だけど違ったんだ。僕はそれで、だからって、加奈を嫌いになんかなってなかった」

もう一度、たしかに、くい、くい、と。

「北川が思えような欲望を、離れれば抑えつけられると思ったんだ。

でもむしろ逆で、前以上に加奈を好きになっていった。

その加速が、どうしょうもなく自己嫌悪を引き出したよ」

本当は、私への、合図だった。

と、くん――。

心臓が、ひときわ大きく、脈打った。

そう――

「悩んだよ、ずっと。ずっと悩んでた。

加奈がいなくなった世界で、僕は加奈のことばかり考えてた。

加奈から離れれば、僕は加奈を傷つけずにすむ、汚さずにすむって思ってた。

だけど離れれば離れるほど、――ダメなんだ、加奈ことが、頭から離れなくなる」

おいでって、言ってくれていた。

私に。

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