トールサイズ女子の恋【改稿】
「また週明けに」
「はい、また…」

 駅の改札口で幸雄さんに見送られて電車に乗ると、休日の土曜日だから乗車している人も少ないので椅子に座って背もたれに身体を預けたら、どっと疲れが襲う。

 昨日1日で色んなことがあったし、精神的、肉体的にも疲労が出てしまうのはしょうがないよね。

 身体にはまだ幸雄さんに触れらてた感触が残っていて、その時の事を思い出すと顔が火照りだす。

 私たち恋人同士になったんだよね、じゃなきゃ深夜の会議室で口付けをしたり、幸雄さんの部屋で―…、さっきからこんなことばかり浮かんで恥ずかしい。

 何とか電車で寝ないようにして地元の駅についてアパートに帰ると、服を脱いで部屋着に着替えて、ベッドにドサッと横たわった。

「疲れた…」

 自分のベッドに横になると身体も緊張感から解放されたのか、スーッと力が抜けていった。

「そうだ部屋に着いたことを連絡しよう」

 付き合う前は沢山メールをすることなんて無かったけど、今はもう幸雄さんにメールを送っても大丈夫な間柄になったんだから、バックからスマホを取り出して文章を考えてみる。

「無事にアパートに着きました…、と」

 送信ボタンを押したら数分しない内に返事が届いて、『良かった。電車で寝過ごしたりしなかった?今度はまた2人で食事に行こう。幸雄』とあり、メールの最後に苗字じゃなくて名前があって、改めて幸雄さんと恋人同士になったんだと嬉しくなって、はじめて恋人同士としてやり取りしたこのメールを消えないようにと思って保護ボタンを押す。

 恋人同士…、四つ葉出版社ではちゃんと仕事モードできちんと水瀬編集長と呼ばなきゃいけないし、誤ってポロっと名前を言いそうになるから、周囲にも交際を明らかにするのはまだにしなくちゃ。

 社内恋愛の大変さは青木印刷会社でも経験しているし、同じ悲しみをまたやらないように気をつけていこう。
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