トールサイズ女子の恋【改稿】

「今日の夜に、出版関係の交流会があるんですよね？」
「そうだよ。久しぶりにスーツを着ると、首元が息苦しいかな」

　幸雄さんが窮屈そうなネクタイを解きたいのか、ネクタイに手をかけて少し緩めるんだけど下手したら取れちゃうかも。

「あっ、あまり緩めるとネクタイがほどけてしまいますよ？」
「ありがとう」
『星野さん、木村だけどそこにいる？』

　私は手を伸ばしてネクタイを整えていたら在庫室のドアをノックする音と木村さんの声が聞こえ、ヤバい！２人きりでいるところがバレちゃう！！

「美空、こっちだ」

　幸雄さんが小声で言いながら私の手を引いて段ボールが山積みされている所に隠れるように座りこむと、ドアが開く音がした。

　私たちはお互い指でシーッとしながら声が漏れないように唇を真一文字のように閉じ、どうか見付かりませんようにと幸雄さんに寄りかかると、幸雄さんの手が私の頬に触れて妖艶に頬笑みながらグロスで光る唇を親指でスッとなぞるので、思わずドキッとして幸雄さんを見つめる。

　お互いの視線が絡み、幸雄さんの顔が傾きながら近づいてきて自然に瞼を閉じたら唇が重なった。

「おかしいな。ここだと思ったんだけど…、他のところにいるのかな？」

　直ぐそこに木村さんがいるのに夢中で唇を重ね、少し唇が離れても磁石のようにまた直ぐにくっついて幸雄さんのスーツの裾をキュッと掴み、木村さんが在庫室から出ていっても口付けが止まることはなく、息を整えたくてほんの少し唇を離す。

「美空、もう少しだけ」
「あっ…」

　小声で囁かれるとまた唇が深く重なって、また誰かが入ってきたらどうしようかと思うけれど、なかなか２人きりの時間が無かったという気持ちを埋めようと口付けを続けた。