トールサイズ女子の恋【改稿】
 side水瀬幸雄

 美空の部屋で一夜を明かした日曜日の朝、俺は身体の気だるさが残るまま起き上がると隣で美空のか細い寝息が聞こえる。

「いい寝顔だ」

 俺は美空の額にかかる髪の毛を指でそっとどかして、美空を見つめながら金曜日の夜のことを思い出す。

 せっかく美空が俺の部屋まで来てくれたのに数時間もドアを開けずにいたのは、この怪我のことや交流会のことを話さないといけないし、話したら美空の心を傷つけてしまうから自分の心の整理がつかなかったのだ。

『お休みなさい…』

 ドア越しに美空の小さな声が聞こえて廊下を歩く靴音が遠ざかり、俺は急いでドアを開けたが美空の姿が無くてドアの側に紙が落ちていて拾うと、そこに美空の字で『また明日、同じ時間にきます』とあり、美空はちゃんと話し合おうとしてここまで来たのに俺はそれに向き合わないで何をやってんだよ。

 元彼に威勢を張ってたけど恋人ならどんなことがあっても2人で乗り越えていかなきゃ、寄り添っていかなきゃ…と紙をくしゃりと握り潰して自分自身にダメ出しをし、今度は俺から美空の所に行く番だと思って、スマホで高坂専務に連絡して美空の住所を人事経由で調べてもらい、美空の部屋へと来たのだった。

 美空の部屋のインターホンを鳴らす前はかなり緊張をして何度も深呼吸をしたっけな、きっと美空も夜中に四つ葉の会議室で仕事をしていた俺のところに来た時はこんな風に緊張していたのだったろうか、美空を好きになってからは色んな感情を学んだような気がする。
 
 俺たちの社内恋愛によって沢山の人を巻き込んで迷惑をかけたけど、味方でいてくれる人がいることにとても感謝をしなきゃな罰が当たるよな。

 ちゃんと美空に向き合って話しあえて良かった、寄り添うことが出来て本当に良かった……、昨日美空と触れ合った2度目は初めてよりも心と身体が強く深く繋がったと感じて、美空とお互いこれからも寄り添って乗り越えていこうと決意した。
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