トールサイズ女子の恋【改稿】
 私たちは立ち上がって、服についた埃を払う。

 そうだ、ありがとうございますだけじゃ申し訳ないから、探してくれたお礼をしなくちゃ。

「水瀬編集長、スマホを探していただいたお礼をさせて下さい」
「そんな。お礼はいらないよ」
「前に駅まで送っていただいたのもありますし、させて下さい」

 押し問答になりそうだけど忙しい中で探してくれたから、お礼はしたい。

「じゃあ、明日のお昼に何処かで食べようか?」
「お昼―…ですか?」
「四つ葉出版社の近くに美味しい定食屋があるみたいだから、そこでもいいかな?」
「いいですよ」
「仕事が終わるタイミングを知らせたいから、連絡先を交換してもいい?」
「はい」

 私たちはスマホの赤外線を使って、連絡先を交換した。

 私のアドレス帳には女友達や母親の連絡先が多く、男性は父親や総務課の課長の名前ぐらいで、男性個人の連絡先を登録したのは元彼以来かも。

「次は落とさないようにね」
「はい、気をつけます」
「明日ね」
「また明日」

 私たちは在庫室を出てロビーで別れ、私は四つ葉出版社を出てビルを見上げると、まだ2階には明かりが点いている。

 そこにはまだ水瀬編集長がいる訳で、本当に忙しいんだと思った。

 明日はお昼ご飯を一緒に食べることになったけど、それでいいのかな?忙しいからお菓子とかで糖分を取って欲しいけど、水瀬編集長がお昼をと言ってたし。

「そういえば、男性と2人でご飯を食べるなんて久しぶりかも」

 歓迎会の時は四つ葉出版社の社員が大勢いたから、明日は2人きりだと思うと何だかそわそわしてくる。

 これってデート前の心境に似てるかも…、というかデート?!
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