トールサイズ女子の恋【改稿】
 私は音楽を聴きながら、ホームで電車が来るのを待つ。

 初日早々にギリギリ到着はまずいので昨日スマホで時刻を調べていたけれど、ちゃんと予定通りに到着するのかやや不安。

「電車が到着しますので、線の内側でお待ちください」

 駅のアナウンスが放送されてホームに電車が到着すると、ドアが開いてぞろぞろと学生が降りてくる。

 私が利用している駅前には高校からのバス乗り場があるので、その高校に通う学生達でホームは混雑しているのだ。

「おっと…」

 私は学生達の波にのまれないように、避けながら電車に乗った。

 会社を退職した後は電車に乗ることもなかったので、此れからは通勤の度にこうした混雑に遭遇するかと思うと憂鬱になりながらドア付近に立ち、側にある銀色のポールに掴まった。

 電車がカーブで曲がる度に人の波が自分の所に来るけれど、私は他の人よりも頭1つ分だけ飛び出ているから息苦しくもなく、こういう時だけは身長が高くてラッキーと思える。

 まだ四つ葉出版社の最寄駅の藍山駅まで着きそうにないので、外の景色を眺めたり中吊り広告を読みながら時間を潰していると、中吊り広告たちの中にファッション雑誌『Clover』があった。

 今日から働く勤務先である"四つ葉出版社"が『Clover』を発行していて、雑誌にはテーマ毎のコーディネートや恋愛特集のページが好きなのでよく購入して読んでいる。

 私が以前いた会社は印刷会社だったので、四つ葉出版社の求人を見た時は少しだけ親近感がわいた。

 『Clover』の隣りにある中吊り広告を見ると他社のファッション雑誌の広告で、カジュアルやエレガントとは違って自分を女子として魅せていく内容で、その表紙を飾っているモデルも可愛いと思える。

 確か身長が160センチくらいだったはずで、あんな可愛い子ぐらいの身長だったら相手も丁度いいと思うよね。

 私は小さく、はぁとため息をつく。

『藍山駅、藍山駅に到着です』

 ようやく四つ葉出版社の最寄り駅に到着したので、私は電車から降りて改札を出ると、四つ葉出版社に向かって歩き出した。
< 5 / 162 >

この作品をシェア

pagetop