トールサイズ女子の恋【改稿】
 四つ葉出版社のロビーを通って総務課に入ると木村さんだけがいて、他の社員の人はまだ来ていない。

「おはようございます」
「おはよう。星野さんって最近何だか元気がないよね?声に元気がないというか、いつもと違うなって思うんだけど」
「そう…、ですかね?昨日はちょっと飲んでいたので、もしかしたら飲み過ぎたかもしれないです」

 木村さんの指摘に内心ドキリとしたけど、水瀬編集長と飲んでいたのは伏せて飲み過ぎたことにしちゃった。

 そして続々と総務課の人たちが出勤し、いつものように総務課の1日が始まり、いつものように郵便局の人から郵便物を受け取ったのはいいけど、編集部があるフロアに行くのがちょっと嫌だな。

 昨日の今日だから水瀬編集長のいるファッション部にいくとなると気まずい…、幸いなのは今日の郵便物はタウン情報部だけだったから、後は水瀬編集長が居ないことを願おう。

 郵便物を抱えてICカードを使って編集部に入ってタウン情報部に向かうと、姫川編集長しかいなくて九条さんの姿はない。

「姫川編集長、タウン情報部宛の郵便物をお持ちしました」
「ああ。そこの机に置いてくれ」
「はい。それでは失礼します」

 姫川編集長は私の方を見向きもせずにパソコンの画面を見ながら指で机を差したので、私は言われた通りに置く。

 なんか姫川編集長って淡白というか、口数少ないし怒っているところしか見たことないし、具合悪そうな九条さんに対しても冷たいというか…、優しいのって水瀬編集長くらいだよね。

 封書も配り終えて総務課に戻っても水瀬編集長のことが頭から離れられなくて、お昼休みの時間でもみんなの会話に適当な相槌をしてご飯を食べるだけにしていた。
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